
Artist's commentary
コビトカバ
<イラストタイトル>
森林の奥深くで過ごすコビトカバ
――古くから伝わる怪物の正体
<動物コメント>
◎人と野生動物の関係研究者 大坂 桃子
ジャイアントパンダ、オカピとともに世界三大珍獣とされるコビトカバは、リベリアを中心とした西アフリカの森林や湿地に生息しています。その名の通りカバと比べて体が小さく、カバの成獣が1トンをゆうに超えるのに対し、コビトカバはオスの成獣でも200kgほどです。
カバとの違いは他にもあります。まず、カバは群れを形成するのに対し、コビトカバは、母子や繁殖期のつがいなどの例外を除いて、基本的に単独で生活すると言われています。母子はいっしょにいますが、コドモは基本的にお母さんの採食にはついていかず、その間植生の中や浅い水たまりなどに隠れ、お母さんが時々授乳のために戻ってくるのを待っているようです。また、カバと比べて、四肢が相対的に長かったり水かきの発達が中程度だったりと、より陸で生活するのに適した特徴を持っているとも言われています。一方で、汗腺がなく毛に乏しい特徴的な皮膚や、水中で耳と鼻を閉じるための強力な弁があることなど、カバと共通した半水生的な特徴ももちろん持っており、陸だけでなく水場も利用しながら暮らしています。
コビトカバは夜行性傾向が強く、昼間は基本的に水の中や植生に身を隠してじっとしており、夕方になると動き出すことが多いとされています。植物の葉や果実などを好み、とある国立公園では、なんと150種もの異なる植物を食べていることが確認されました。そんな豊富な食性をもつコビトカバは、近年農地にも出没しており、サツマイモやオクラ、キャッサバなどを食べて被害を出していることが記録されています。
コビトカバは、森の中に暮らし、夜行性で警戒心が強く、依然として観察が難しい種のひとつです。その生態も、まだまだたくさんの謎に包まれています。しかし、近年の森林減少などが引き金となって、つい数十年前まで「見ることも難しかった」と言われていた動物たちが、今や毎日のように人里にあらわれ、農作物被害などをおこし害獣扱いされている状況が、世界中の多くの種で生じています。コビトカバが同じ道を辿ることなく、これからもアフリカの森に生きるロマンあふれる動物として存続し続けていくことを願ってやみません。
(2026年8月公開)


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