
Artist's commentary
新たなる翼
今頃になって機動戦士ガンダムSEEDシリーズを初めて全部観た。そしてその勢いで劇場版も観た。
ああ、こんなにすごい作品だったのか。
自分の人生においてリアルタイムのムーブメントに乗り損ねた作品がまた一つ増えた。
思えば自分の人生にとってガンダムSEEDという作品は本当に縁遠い存在だった。
ガンダムSEED放映前、「次のガンダムはファーストをリメイクするらしい」とかいう噂が流れていて結構気になっていた。
そして情報を入れずに観た初放送第1話。
目の前に映し出されたのは、全然リメイクでもなんでもない世界観と安彦キャラとは程遠いお目目パッチリのキャラクターだった。
テレビを観た場所は、当時アシスタントで働いてた某漫画家先生の仕事場。
そこにいた割と懐古主義なアシスタント仲間が「全然ガンダムじゃねー」「なんで胸が揺れる必要がある」とか大声で罵倒を始めた。
その後、同じ仕事場では次の週のその時間テレビがつくことはなかった。
時は流れ2006年。
自分は漫画家を廃業、玩具系原型制作会社に入社する。
そこは親会社がフィギュアなどの生産メーカーで、丁度「機動戦士ガンダムSEED DESTINY」のフィギュアをものすごい勢いで量産されていた頃た。
自分の担当は原型制作のディレクター。
そしてSEEDのフィギュア原型制作進行はトラブルの祭りだった。
入社したての自分はその後数年間SEEDの人気が衰えるまで、そのトラブルに翻弄されることになる。
トラブルの中で最もひどかったのが、当時親会社営業担当のお抱えである某原型師集団が作る原型だった。
生産を全く考えない造形。一度たりとも守らない納期。出来の悪い造形に修正指示を出すと逆ギレする原型師代表。
納期当日に50%くらいの完成度に泥のようなサーフェーサーを吹き付けたゴミのような原型を平然と納品してきた時は頭を抱えるしかなかった。
そんなことがあり、作品には全く罪はないのに自分にとってガンダムSEEDは「恨みの対象」でしかなくなっていた。
そうやって作品の内容と直接関係のないところで嫌いになった作品はいくつかある。
だが、作品にとっては迷惑な話でしかない。
しかしその後、あるアニメ作品により自分の固定観念の破壊を体験する。
「スクライド」というその作品は、サンライズ制作でキャラクターデザインはガンダムSEEDと同じ人だった。
ある日、これに出てくるあるキャラクターのフィギュア原型を作ることになった。
自分は「ガンダムSEEDと同じ人のキャラクターデザイン」というだけで不要な拒否反応を持ち、当初設定資料だけを観て原型制作を進めていた。
しかしそうやって作った箇所のクオリティに対して、お客様からクレームが入る。
当時の客先のセネラルマネージャーは「スクライド」の大ファンで、それは客以上にエンドユーザーとしての真っ当な意見だった。
そして自分は仕方なくその作品を観ることになる。
するとこれがめちゃくちゃ面白い。自分の趣味にストライクな内容だったのだ。
自分は創作の世界で長く生きてきたのに、創作から離れたことで単純なことを忘れていた。
「良いものは良い」ただそれだけのことだ。
誰が作ってるとかその作品に関わって何があったとか周りの意見とかそんなことはどうでもいい。
出来上がったものが全て。それを自分が観て良い思ったら良いと言えばいい。
気がつけば自分はどれだけ人を気にして生きてきたのだと。
かつてカードゲームで描いたことのあるフリーダム。
あの時は資料だけを頼りに自分がかっこいいと思ったガンダムを描いた。
でも今改めて描いたフリーダムは、自分の好きなシーンを描いた。
どんなに手垢がついてようがありきたりと思われようが、俺が一番好きなのはやはりこのシーン。
「Meteor」聴きながらご覧ください。
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