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Media asset #1
Danbooru

Artist's commentary

#NegaResurrectionPLR P018

サンズ・バーの夜
シリーズ:novel/series/8632277

「ここ……どこだ、ここ」
気が付いた時そこは場末のバーだった。
客は自分を除いて誰もいない、そもそもに僕も客ではない。
「やっと起きたか、良く寝ていたな」
唯一、カウンターに立っていたゾンビが声をかけて来る。
「ここは?」
「そうだな、ここはココはいわゆる彼岸だ。名前は無いがあえて名前を付けるのであればリバー・ステュクス、ジャパン風に言うならサンズ・バーとでも言おうか。俺はカロンだが愛想が良いことで有名だ。ゆっくりしていってくれ」
「ということは僕は死んだのか」
「察しが早くて助かる。俺の名前はメイソン、ここのマスターをしている」
初老のゾンビが握手を求めた。
握る手は干乾びている。
「トラックマンだ」
「何か飲んでいくかい。ここはバーだが何でもある東洋の酒も西洋の酒も、古い物も新しい物も、カクテルもできる。ただお前は無一文だ、誰もお前に手向けをしていないからなオボロス銅貨が無ければすぐにあの世へは渡れない。そして飲み過ぎへの注意。ここでの酩酊はすなわち地獄へ落ちる事だと思うんだな」
「ずいぶんとめちゃくちゃな生死感だな、じゃあモヒートでも」
「わかった」
メイソンが微笑みそこにはすでにモヒートが置かれていた。
「さっき酩酊は地獄へ落ちると言ったがここは川岸なんだろう、現世に戻るには?」
「それはまぁ自分で考えるんだな、ここは別に地獄へ落ちるべきかをテストしているわけではない、俺は試験官でもキングエンマでもないしアンタの発言をチェックしてはいない、好きなだけゆっくりしていくといいさ、それともあの魔女にさっさと復讐をしたいかい?」
知っているぞと彼は言う、試験官ではないというその口で。
復讐心が無いと言えばウソだが蘇って復讐を遂げるほど執着しているわけではない。
死ぬ直前の記憶はあいまいだが、やはり僕はあの魔女に殺されたようだ。
「ずいぶんと物知りだな」
「そうでもない、あの世に出す履歴書を拝借しているんだ、そいつの死にざまとか、仕事はトラック運転手、それに魔女狩り、あとは……死体漁りはあまりいい趣味とは言えないな」
メイソンはこちらには見えない紙をたどるように腐った視線を巡らせ、腐った少し顔をしかめた。
「それは解ってる、生前というかゾンビになる前の話だ、その時はまた違う物を集めていたんだ」
「コレクター気質って事か」
「まぁ、言い方次第だがそんなところだ。メイソンはカートゥーンは?」
「悪いがあまり見ない」
「そうか、僕は好きだった。カートゥーン、特にジャパニメーションが好きで、その中でもスタジオヴドウが作った「ゾンビシスターズ13」というアニメーションに心底傾倒してた」
「解った、修道女がゾンビをエクソシストするんだな」
「ちがう、妹だ。ニッポンでシスターと言えば妹だ。ゾンビの美少女姉妹13人が闇のゾンビ軍団と戦うんだ。特に三女のアイシズが好きだった。金髪で活発な少女ゾンビで家事が上手なんだ。僕はナードだったし両親は早くに他界していたが13人の姉妹がいた……いたんだ。部屋にはシスターズのグッズやフィギュアが沢山あった。幸福ではなかったかもしれないが不幸でも無かった」
早口になっていた自覚はあったがメイソンは特に口出しせず話を聞いていた。
「でも、ある日世界が燃えて滅んだ。僕の部屋も置かれていたフィギュアもドロドロと燃えて溶けて異臭のするプラスチックの塊になっていった。自分の体も燃えていて、考える余裕なんてなかったんだろうけど不思議とショックでは無かった。幸い僕はゾンビになり生き延びた。部屋のシスターたちは全て死んだ。そして始めにこう思ったんだよ、ああ、次は何を集めて不自由になろうかって。自分を縛る、外側の枠みたいなものがなくなってしまったと思った。部屋は真っ黒に焼けていたがやけにがらんどうで空白だった」
この世界には魔女を殺すぐらいしか仕事は無かったから結果的に死体蒐集家になっていた。
自分でもその順応性に驚いているし、もしかしてゾンビになった時に既に僕の人格は死んでしまったのかもしれない。
それでもゾンビガールコレクターである自分に僕はそれなりに満足していた。
どうにも自分は自分好みの不自由に囲まれていないとやっていけない性格のようだった。
「すまない、変に喋りすぎた。ウイスキーを何かカクテルで欲しい、さっぱりしたやつが良い」
「あいよ、ゾンビ姉妹については良く解んねーが、お前のことは少しだけ解ったよ、あんたの執着も少しわかった。喋りすぎは気にするな、ここは懺悔室ではないが放り込まれた奴らは何かと身の上話をしたがる。神父様も居ないし、神は……居ないかあるいは既に焼け死んでいるから代わりに俺が聞いてる、おかげで色々と事情通になった」
出てきたカクテルはバーボンにミントが浮かんでいた。
それは少し甘くすっきりとしている。
「ひとつヒントをやろう」
メイソンは銃を構えながら言った。
彼は自分のグラスにもウイスキーを注ぐ。
「仮に俺がお前を撃つ、そうしたらお前はどうなると思う?」
「地獄へ落ちる?」
「正解だ。ただし正解ではない」
「それはどういう」
「お前が思っているような事実はない。死は消滅ではなく、あえて言葉にするのであれば移動のような物だ少なくともここではな。既にお前は経験しているんだ。過去2回死にそしてここへ移動してきた。地獄とは下へと落ちる物だがここはまだお前たちの世界の隣にある。扉を探すんだ。世界の構造に慎重に指を差し込んでその隙間をこじ開けるんだ」
メイソンは構えた銃をこちらへと渡した。
「安心しな、あの世に行くまであと200年は時間がある。ゆっくりと考える事だ」

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