
Artist's commentary
深紅の瞳(続)
貧民街奥の娼館に彼女はいた。金髪は老婆のように白く染まり、目には隈が色濃く刻まれ、身体は血色が悪い。 そんな、変わり果てた姿の彼女は怯えたような目線をこちらに向けている。
「ここにいたんだね」
彼女は何も言わない。私もそれ以外の言葉が思いつかなかった。彼女の姿を見て、喜びよりも落胆が強かったことを表情から見抜かれたのではないだろうか、と恐れていた。
「君は…あの時に死んだとずっと思っていた」
気の利いた言葉も見つからず、ただ茫然と立ち尽くしていた。
「私は、よくあなたの顔を思い出していたわ。あなたが今まで通り頑張っている姿を思い浮かべて、心の支えにしてた」
「……」
彼女は思い出を胸に、騎士としての誇りを奪われ、貧しい環境の中で必死に生きてきた。だが、古い知人に今の自分の姿、境遇を見られ、その知人も純粋に再会を喜べない、という態度を見せていたら、それはどれだけ彼女を傷つけるだろう。私がここに来たことが、彼女が積み上げてきた何かを崩してしまったのではないだろうか。
「正直、私は今の君の状態をすぐには受け止められなかった。けど、それでも…!」
「…うん、わかってるから。そんなに傷つかないで」
「え…私が…? なぜ」
辛い目に合ってきたのは彼女の方じゃないか。
「だって…私のことを想って、とても悲痛な顔をしてるじゃない」
「あなたは時々弱さを見せていたけど、それは理想と現実、正しさと感情の間で揺れて、自分を責めているとき。私はあなたのそういう繊細な心柄に惹かれていたの。私が怖がってたのは、あなたが別人のように変わっていたり、私のことを何とも思わなくなってしまったんじゃないかってことだけ……でも安心した。私は…ここにいるよ。」
私の恐れは杞憂だったようだ。彼女は強く、優しいままだった......私よりもずっと。
彼女が見せてくれた態度が、私の戸惑いを全て消し去ってくれた。私は、彼女を…
「……ところで、この後はどうされます?”すてきな”騎士様。」
彼女の言葉が、私をまた戸惑わせた。
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